「また会えるかな」

「関根さんはいつもいるの」

「いやいや、私はあなたとは付き合いたくないですよ。もう二度と会わないでしょう」

と言うと、憮然としました。

「いや、申しわけありません。本当のことを言うと、**さんとはいつまでもお付き合いを願いたいのですが、2か月後には退社して他の企業に移ります」

と伝えると、一瞬笑みを浮かべたが、本当にがっかりしたようで「ほんと、それは残念だ、また会えるかな」と。私は「無理でしょう」とにやりとし、彼も笑い、車のドアを閉めました。

このとき、この男まだ若いと踏み、20代後半なのだろう、と読みを改めました。走り去る車は元気になっていました。がんばれ。

※本稿は、『カスハラの正体-完全版 となりのクレーマー』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。


『カスハラの正体-完全版 となりのクレーマー』 (著:関根 眞一/中公新書ラクレ)

シリーズ累計30万部突破のベストセラー『となりのクレーマー』に大幅書きおろしを加え、カスハラがはびこる令和の世に問う。苦情処理のプロが、これまで実際に対応した事例を基に、相手の心理の奥底まで読んで対応する術を一挙に伝授。イチャモン、無理難題、「誠意を見せろ!」カスハラたちとの攻防が手に汗握る、でもかなり面白い「人間ドラマ」の数々。