2023年に甲状腺がんと診断された永寿総合病院 がん診療支援・緩和ケアセンター長の廣橋猛先生は「がんの緩和ケア医療を専門とし、医師として患者に正面から向き合ってきたが、いざ自身ががん患者になると戸惑うことが多くあった」と話します。そこで今回は、廣橋先生の著書『緩和ケア医師ががん患者になってわかった 「生きる」ためのがんとの付き合い方』から一部を抜粋し、がん患者やその家族が<がんと付き合っていくために必要な知識>をお届けします。
一般のがん患者さんは戸惑うことが多いはず
甲状腺がんと診断され、入院予約をするために患者支援センターを訪れたときのことです。ここで、困りごとへのなんらかの配慮があるかなと期待していたのですが、残念ながら「ほかに、なにか困っていることはありませんか」の一言で終わってしまいました。
私はがん治療に関わる医師として、自分の困りごとがなんなのかを自分で整理できていました。うまく情報を集めて、理解ある同僚たちのおかげで、自分で解決できる目処が立ちました。だから、特にこれで問題はありません。
ですが、がんと診断されたばかりの患者さんは、自分自身がなにに困っているかも、うまく心のなかで整理できないでいます。治療に向けて、これからなにをすべきかわからないままの方もいるでしょう。
これまでがんと無縁だった一般の患者さんにとっては、自分で適切な情報にあたり、周囲の人たちに相談していくこと自体が非常に難しいことなのです。
しかし、本来は、どうしたらよいかわからないという困りごとでさえ、患者さんから声を上げなくても、自然に病院で支援を受けられるべきです。