がんと診断されたときこそ緩和ケアのサポートが必要
例えば、私が知っている方のなかに大腸がんと診断された50代の女性がいました。彼女は健康診断で便に血が混じっていることをきっかけに病気がわかり、手術を受ける必要がありました。
さらに手術で治せる可能性が高いとは言われたものの、もしかしたら人工肛門を造る必要があるかもしれないこと、術後に抗がん剤治療を行う必要があることの説明を医師から受けました。
彼女は長く勤め上げた会社の経理を担当していて、数年後に退職を考えてはいたものの、仕事の整理や引き継ぎはなにもできていませんでした。
人工肛門になって、抗がん剤をしながら仕事はできるのだろうか、身体への負担はどれくらいなのだろうか、医療費はどれくらいかかるのだろうか、会社の人たちになんて言おうか。彼女の頭のなかは「どうしたらよいのだろう」で埋め尽くされてしまいました。こんな彼女に必要なのが緩和ケアなのです。
ただ、病気が進行したときには、自然と医療者から緩和ケアを勧められるかもしれませんが、がんと診断されたばかりには、積極的に病院から緩和ケアを名指しで勧められることは少ないのが現実です。
診断時であっても、がん患者さんはさまざまな困りごとを抱えていますが、どうしてもそこに着目できる医療者は多くはないのです。患者さんたちも、誰とも相談できないまま、なんとかやり過ごしてしまっています。
その診断時からの緩和ケアに関して、最初の担い手となるのが、がん診療連携拠点病院に設置されている、がん相談支援センターです。がん治療を行なっている大きな病院には、必ずこの窓口が設置されていますので、ぜひ探してみてください。