意識的な減塩は血管と健康を守る

厚生労働省が策定している「日本人の食事摂取基準」では、食塩摂取量の基準を2020年版より、高血圧および慢性腎臓病の重症化予防を目的とした量として、1日の推奨摂取量は6g未満と設定されました。小さじ1杯が約5gですから、ほぼそれくらいが1日に摂取できる量の目安になります。欧州高血圧学会、欧州心臓病学会のガイドラインでは、血管病を防ぐ理想的な食塩摂取量は1日3.8gまで、と定めています。

しかし、全身のミネラルバランスを保つために必要な塩分は、実は1日わずか1.5g。人間はそれだけの塩分で十分に生きていけるのです。ちなみに、日本人の食塩摂取量の平均は、1日約10g(日本高血圧学会、厚生労働省の基準等による)。普段の生活で、いかに過剰に摂取しているかがわかります。

ではどのように減塩をしたらよいのでしょうか。1つは意識的に塩分を減らすこと。もう1つは薄味に変えること。1日に1g減らすことができたら、1年で365gの減塩に成功します。たとえば、調味料を控える、漬物や佃煮、梅干しを食べ過ぎない、汁物や麺類を食べる回数を減らす、塩分が高い食品(干物、練り製品、ベーコンなど)を控える、などが効果的です。

薄味に慣れるには、減塩調味料を活用したり、だし、酸味、香りなどでおいしくする方法があります。もっと簡単なのは、腹八分目を心がけること、外食を控えめにすること。この2点は、糖尿病対策、高コレステロール対策、肥満対策にもなり、さらに効果的です。

塩分以外にも、魚や大豆製品の良質なたんぱく質を摂ること、野菜を毎日食べることが奨励されています。良質なたんぱく質は内皮細胞が丈夫に生まれ変わる材料になります。肉なら、脂肪が少ない赤身がよいでしょう。野菜は抗酸化力が高いので、血管を傷つける活性酸素の除去に役立ちます。また、塩分(=ナトリウム)を体外に排出する効果があるカリウムを豊富に含むものが多いので、減塩にもつながります。

さて、これまで血管の重要性、内皮細胞を生まれ変わらせる方法などをお伝えしてきましたが、突然死の「最後の引き金」になるものがあります。それはストレスです。不安やイライラ、ヒートショックなど、心や体にストレスがかかると、血管はギュッと収縮します。その結果、血管が破れたり、血栓が詰まったりする可能性があるのです。

日頃から楽しいことに目を向け、リラックスして過ごすことも、実はとても重要なリスクマネジメント。自然の中を散歩して深呼吸をしたり、ヨガをするのもいいでしょう。血管を強く保ち、にこにこ笑って過ごせたら突然死とは無縁になるはずです。