近距離で絵を見せる
劇中には、「青本」「黄表紙」など江戸時代ならではの書物が登場する。絵師が描く絵もドラマを彩る重要な要素だ。
「本はなるべくわかりやすく見せると同時に想像してもらうということも大事にしています。ドラマは視聴者のものですから。今回は、絵のパートでは特殊なレンズを使っています。たとえば第3回の北尾重政が絵を描いているシーンは、(筆を握る)手元から顔をそのまま撮っています。虫を撮影するときなどに使うレンズで撮影しました。絵には遠目で見る良さと近くで見る良さ、両面ありますが、遠目で撮ることは普通にできるので、いかに近くで撮るか。それが浮世絵とか絵のパートでの面白い部分になるといいなと考えています」
華やかな花魁たちの姿だけでなく吉原の暗部も描いてきた。第1回では、亡くなった女郎たちが着物をはぎ取られ、寺に打ち捨てられた場面が強烈なインパクトを残した。第8回では、客が押し寄せ疲れ切った瀬川のリアルな描写が話題を呼んだ。
「吉原の陽と陰を意識しました。(吉原の女郎は)20歳そこそこが平均寿命。調べるほどに過酷な現実がありました。華やかな部分ではないところも目を背けずに描かないといけないというのが、スタッフ全員の総意です。ただ、苦しいことつらいことは、『吉原だから』というだけではなくて、どこの社会でもいつの時代でもある。より吉原はきついのかもしれないですけども、つらさはその人にしかわからない。組織も社会も全てその人にとってどうであるのかが全て。吉原の見え方がステレオタイプにならないようにしたいと思っています」