堀川 大がかりな機器は不要、自分で透析ができるから災害時に強い。それは、平常時であっても、高齢で週3回の透析通院が難しいとか、持病や加齢、終末期の衰弱などで血液透析すること自体がつらい人たちにも同じことが言えますね。
森 そうなんです。当時勤めていた東北大学病院で腹膜透析を取り入れた1年目は、血液透析の施設がない地域の病院に拠点を置かせてもらいました。
いざ始めてみると、患者さんはほとんど高齢者。透析のために遠い道のりを週に3日通うのをためらっておられましたので、自宅で腹膜透析ができるようになって喜ばれました。しかも、高齢の血液透析患者さんより元気なように見受けられたのです。
堀川 除水しすぎないから?
森 はい。活動量も水や食事の摂取量も少ない高齢者は、水分も老廃物も血液透析のようにたくさん抜く必要がない。若者が腹膜透析する場合、1日に1.5Lの透析液バッグ3~4つ分を腹腔内に注入しますが、高齢者は1つで十分な場合があり、かかる時間も短くてすみます。
堀川 高齢者は、10年先、20年先まで生きるための透析ではなく、日々の生活の質を落とさず、家族にもできるだけ負担をかけずに過ごせる形で透析を続けたいと思う人も多いでしょう。その思いを理解して、そっと背中を押してくれる医療者の存在が、やはり必要なんです。
森 私自身、そういう存在でありたいと思っています。その半面、ジレンマもあるのです。高齢患者さんや終末期の患者さんの場合、日々のセルフケアが難しくなると、周囲の手助けが必要になります。
私が患者さんに腹膜透析を勧めることで、ご家族に負担を強いてしまうかもしれない。そのことを忘れないように気をつけています。
https://jsn.or.jp/jsn_new/iryou/kaiin/free/primers/pdf/2024allpage.pdf