共感が得られない「管理職問題」

管理職の苦境は、環境問題や貧困問題のような社会的イシューとしての「わかりやすさ」や「共感されやすさ」を持ち合わせていません。多くの管理職は、組織の序列では上位者であり、賃金も多くもらっています。多くの人は、そうした管理職の負荷に対して無関心です。管理職問題はあくまでビジネスや会社運営上の問題であり、「管理職を救う」といったミッションは、社会的なものになかなかなりません

しかも、その共感の得られなさからか、管理職本人もなかなか声を上げようとしません。プライドが邪魔して助けを求められなかったり、組合員ではなくなったため労働組合に相談できなかったり、家族を支えたり会社の部下を守るために、様々な重圧を受けながら孤独にこの問題に対処することは、むしろ悲劇につながりかねません。

(※1)東京大学プレスリリース「日本と韓国では管理職・専門職男性の死亡率が高い」http://www.m.u-tokyo.ac.jp/news/admin/release_20190529.pdf

(※2)田中宏和・小林廉毅“管理職の健康―他職種との比較、時代的変遷、今後の課題”日本労働研究雑誌2020,725:82-98
※ここで言う管理職とは、日本標準職業分類(大分類)における管理的職業従事者であり、生産や販売の現場ではなく、オフィスにおいて、専ら経営体の全般又は課(課相当を含む)以上の内部組織の経営・管理に従事するものを言います。
Tanaka, H., Toyokawa, S., Tamiya, N., Takahashi, H., Noguchi, H. and Kobayashi, Y. (2017)“Changes in Mortality Inequalities Across Occupations in Japan: A National Register based Study of Absolute and Relative Measures, 1980-2010, ”BMJ Open. 7(9): e015764

※本稿は、『罰ゲーム化する管理職 バグだらけの職場の修正法』(集英社インターナショナル)の一部を再編集したものです。


罰ゲーム化する管理職 バグだらけの職場の修正法』(著:小林祐児/集英社インターナショナル)

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