日本の外食文化の可能性

料理のジャンルなどにもよりますが、コース料理を食べるとすると、およそ2時間。これは1本の映画を観るのと、ほぼ同じくらいです。

ではお聞きしたいのですが、「大しておもしろくない」とわかっている映画をわざわざ観るでしょうか。たまたま時間が空いたからといって、映画館で別に観たくもない映画に時間とお金を費やすでしょうか。いずれも答えは「ノー」でしょう。

『一流飲食店のすごい戦略 1万1000軒以上食べ歩いた僕が見つけた、また行きたくなるお店の秘密』(著:見冨右衛門/クロスメディア・パブリッシング)

食は毎日のことです。時間の都合、場所の都合、その他さまざまな都合で、特に意志を持って選んだわけではない店で食べるときもあるはず。それは十分理解できます。

しかし、数ある飲食店との出合いを、毎日の食事の何回かに1回くらいは「意志を持って選んだ映画を観に行く」くらいの感覚で捉え、純粋に食体験そのものを楽しむ人がもっと増えたら、料理人や店側も、それに応える価値ある体験を提供しようと、より創意工夫を重ねるようになる。

その結果、店と客の間によい循環が生まれ、飲食業に携わる人々のやりがいも高まり、より幸せに働ける環境が育まれていくでしょう。それに伴い、素晴らしい日本の外食文化の可能性もさらに広がるに違いありません。