デビュー60周年という区切りの年を迎え、ますますトップギアで走り続ける五木ひろし。デビュー当時からキーを下げることなく今もその歌声をキープするのは、自分に課している厳しさの表れだ。2025年に開幕した全国ツアー、坂本冬美との「ベストカップルコンサート」で全国を飛び回る日々。松山まさるとしてデビューしてから丸60年を迎え、2025年3月に新曲を発表。タイトルは「母の顔」。カップリングは「居酒屋『昭和』」。毎年地元福井で「美浜・五木ひろし ふるさとマラソン」を開催しており、2年ぶりに行われた「ふるさとチャリティコンサート」で、福井県県民賞を受賞、県知事から表彰された五木さん。新曲にかける意気込みを聴いた。(構成◎吉田明美)

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おふくろへの感謝の気持ちを歌に

デビュー60年、そして五木ひろしとして再スタートして55年。そんな区切りの年を去年迎え、また気持ちを新たに2025年に踏み出しました。リセットして最初にリリースした新曲は「母の顔」と「居酒屋『昭和』」です。

今の僕があるのは本当にたくさんの方々のおかげなんですよ。

この年になってますます、人への感謝の気持ちが沸きあがり、いつも「ありがとう」という気持ちで過ごすようになりました。だから今度の新曲は、お世話になった方々への感謝の思いをこめようと考えたんです。でも振り返ると、その感謝の気持ちを一番伝えたいのは、やっぱりおふくろだったんです。

それでできたのが「母の顔」です。今回は僕が詞を書きました。おふくろへの感謝の気持ちを歌にしようと決め、作詞家の方に依頼するつもりでしたが、今のこの僕の気持ちを説明して伝えるのも難しい。このあふれるような思いはもしかしたら僕自身じゃなきゃ書けないんじゃないか、この気持ちを素直に歌にすればいいんだ、と思い至りました。

タイトルを「母の顔」とした通り、いつも苦労していた横顔が僕の目に焼き付いています。働いて働いて、いつも働いている姿しか浮かばないおふくろ、その姿を思い出しながら書きました。

お母様と赤ちゃんの五木さん(写真提供:五木さん 以下すべて)