
すっかりファンになってしまい、イチローさんの試合だけはテレビで追いかけたものです…(写真:stock.adobe.com)
時事問題から身のまわりのこと、『婦人公論』本誌記事への感想など、愛読者からのお手紙を紹介する「読者のひろば」。たくさんの記事が掲載される婦人公論のなかでも、人気の高いコーナーの一つです。今回ご紹介するのは埼玉県の80代の方からのお便り。~~そうで――。
さすが、イチローさん
物忘れが激しくなり、体力も減退。ひとり暮らしが寂しいと感じることが増えたので、他県に暮らしている娘の助けを借りて、1年半前に施設へ入居しました。長生きは望まないので、荷物もそこそこの身軽な入居です。
気楽な生活が待っていると思っていたのですが、予想外に厳しい規則や決まりごとの数々に驚きました。ついていけないことも多く、改めて自分の衰えを感じて涙することも……。そんななか、久しぶりに昔を思い出して元気の出るできごとがありました。
昼食後の食堂でボンヤリ眺めていたテレビ。そこに映ったのは、米国野球殿堂入りを果たしたイチローさんのインタビューでした。
「この吉報を、まずはどなたに伝えたいですか?」と問われた彼は、なんとも素敵な笑顔で即座に、「女房です」と一言。さすが愛妻家! と感激した私でした。というのも、私は彼の結婚に救われたことがあったからです。
私が結婚したのは、もう半世紀も前のこと。相手は8歳も年下の若者でした。「年の差婚」をどこか恥ずかしく感じながら過ごすこと幾星霜。人気絶頂だったイチローさんの結婚報道が舞い込みます。妻は年上の方で、年の差はなんと8歳。ヤッター、すごい味方を得た! と私は狂喜しました。
その後は大いに利用させていただき、年の差の話になるたびに、「イチローさんちと一緒だもん」などと得意顔。すっかりファンになってしまい、イチローさんの試合だけはテレビで追いかけたものです。
久々に画面を通して拝見した妻の弓子さんは、まだまだ若々しく、お似合いのご夫婦。無言の声援を送り、笑顔を取り戻した私でした。