井出さんが主宰する「食品ロス削減検討チーム川口」は、埼玉県川口市で、年に2回ほどフードドライブを実施している。集まった食品は、市内の学習支援施設の子どもたちなどに届けられるという(©食品ロス削減検討チーム川口)

 

食べ切れないなら寄付をしても

家庭での食品ロスを減らすには、保存の仕方に気を付けて鮮度を保つことも大切です。たとえば、先ほどお話しした卵。扉部分に卵を入れるポケット付きの冷蔵庫がありますが、ここにストックしておくと、扉の開閉のたびに揺れ、温度も変化するので傷みやすくなるのだそう。卵はパックのまま、冷蔵庫の奥に入れておくのが正解です。

もやしのように足の早い野菜は、買ってきた当日に調理するのが基本ですが、しょっちゅう買い物に出られないのであれば、野菜専用保存袋を使うのもひとつの方法です。文房具店やスーパー、100円ショップなどで購入できて、ラップやポリ袋で保存するより、圧倒的に長持ちします。

精肉のようにトレーに入っている物を冷凍する時は、トレーから出して、ラップでくるみ直して冷凍庫へ。空気に触れないので酸化が進みにくくなります。そしてくるみ直す際は、できるだけ小さく、薄い形にするのがベター。豆腐も同じようにパックから出し、水を張った密閉容器に入れて保存するほうが長持ちします。余裕があれば毎日水を取り換えてください。

生鮮食品ではありませんが、虫が発生しやすいお米は、わが家では2Lのペットボトルに入れて冷蔵庫で保存しています。じょうごを使うと楽に入れられますし、計量の際も簡単に出せるのでおすすめです。

また、保存がきく食品や飲み物をムダなく使う方法として、「ローリングストック法」というものがあります。これはレトルト食品や缶詰などを災害時用の備蓄食品としてストックしつつ、「非常食」ではなく「日常食」として食べる方法。

備蓄した食品を数年に一度確認して、古くなった物を一気に捨てる方は多いと思いますが、日ごろからこの習慣をつけておけば、家にどんな備蓄食品があるかを認識できますし、こまめに賞味期限をアップデートできます。ちなみに、缶詰は基本的に3年間が賞味期限とされていますが、実際はもっと長持ちしますし、味の濃いシロップ漬けや魚の味噌煮などは何十年でももちます。

食品類を整理するうち、お中元やお歳暮でいただいた海苔やお茶、海外旅行のおみやげのお菓子やお酒……など、消費し切れない物が見つかるかもしれません。それを持ち寄り、経済的に困窮している人や福祉施設に寄付する「フードドライブ」という取り組みがあります。ここで言う「ドライブ」とは、「募集のための宣伝」「運動」の意味。企業のほか、自治体でも実施しているところがあるので、もし自宅近くで見かけたら寄付をするのもいいと思います。

もうひとつ、2000年に日本で始まった「フードバンク」という活動もあります。食品を事業者や個人から引き取り、困っている施設や人に無償で分配。古くはアメリカで始まった仕組みですが、日本では現在、北海道から沖縄まで、大小100のフードバンクがあり、その多くはNPO団体が運営しています。このような団体に寄付するのもひとつの方法です。

自分や家族が食べるぶんだけを買う。そして買った物は傷む前においしくいただく。シンプルなことですが、年齢を重ねた方こそ、買いすぎ、捨てすぎ、余らせすぎを防いで、家計のスリム化を実現しましょう。