全国大会は命が焦げ落ちていくような毎日

いつも大人びてやや扱いにくいお年頃の彼らだが、独特の空気のなか、全国レベルの高校野球のシビれる試合を観戦している表情は、令和も平成も昭和も変わらない。ただただ野球が好きな少年たちそのものだった。

いま坊主頭は少数だけれど、彼らなりにそれぞれいろんなプレッシャーを抱え、全国制覇を目指して地方大会を駆け上がり大阪に乗り込んできた選手達だ。
束の間色んな緊張から解かれて、憧れの高校野球と、そのワクワクするような雰囲気を心から楽しんでいるような姿を見ていると…。
なんだか普段「がんばれ!負けんな!そんなんじゃダメじゃん!」とお尻を叩いてばっかりな母は、ちょっと心が洗われるような気持ちになってしまった。

ヒットを放った瑛介

僕らもそう遠くない将来、必ずここに帰って来て「あっち側」に立ちたい――と、ちょっと身がすくむような高さの外野スタンド席から、中学生達は選手達の立つグラウンドを眺めていたのだろう。

甲子園準決勝という熱戦、その空気の一部として試合を見守った選手達は、目の覚めるような刺激をビシビシ受けて、頭の中のイメージをブンブン膨らませらませながら、翌日からの自分たちの試合に臨んだに違いない。

今振り返るとあっという間だが、全国大会のひと試合ひと試合を見守っていた親でさえ、その渦中はジリジリとと命が焦げ落ちていくような毎日だった。
ああよく生きて帰れたものだ。
全国大会…恐るべし。

生還したときの嬉しそうな笑顔