やなせ作品の理解が深まった
アニメ『それいけ!アンパンマン』には放送開始の1988年からめいけんチーズ役でレギュラーになり、その後、ジャムおじさんなど複数の役を演じさせていただいています。やなせ先生とお会いする機会はあったのですが、2人で話すような機会はなかったので、もっとお会いしてお話ししたかったなあと思いました。
改めて、やなせ先生と暢さんの生涯を幼少期から紐解く作品に携わることで、「こういうことがあってアンパンマンが生まれたんだ」と考えるきっかけになりました。もちろん今までも考えてきたし、やなせ先生の本も読んできたのですが、角度が変わったというか。
「アンパンマンという作品がなぜ長く愛されてきたのか」という質問はこれまでも聞かれたことはあって、自分なりに答えてきました。やなせ先生の戦争体験や弟さんを失ったこと、いろんなことを経てアンパンマンができたことは知っていました。『アンパンマンのマーチ』の歌詞に象徴されるように、アンパンマンは、人間にとって大切なことを優しいけれども深い言葉で表現しています。アンパンマンの根底にあることをわかっていたけれど、ドラマを通じてより深く理解できました。
2代目ジャムおじさんの声優もやらせていただいています。ジャムおじさんのセリフってやなせ先生の気持ちが直接表れることが多いんですよ。「ひもじい思いをしている人を助けるのが僕は本当にうれしいんだよ」というセリフが印象に残っています。もちろん、36年、毎回一生懸命キャラクターを演じてきましたが、『あんぱん』に携わったことで、よりしっかり演じなくちゃいけないと思いました。
クランクアップのときは、アンパンマンの「カバおくん」の声であいさつをしました。僕、カバおくんがいちばんしゃべりやすいんです。「図案科の歌で紅白に行きたい」ということは撮影中に話していましたね。あの歌は、わけのわからない歌ですけど、本当に嫌な気持ちが吹き飛びます。『アンパンマンのマーチ』とともにみなさんの心の友になってほしいです。