この春スタートしたNHK連続テレビ小説『あんぱん』のモデル、絵本作家のやなせたかしさん。戦争や家族との死別など、多くの困難にあっても絶望せず、個性的なキャラクターを通じて子どもたちに伝えたかったメッセージとは。アニメ声優を務める戸田さん、ドラマの脚本を手がける中園さんが、その人柄について語ります(構成:内山靖子 撮影:清水朝子)
アンパンマンが持つ力に圧倒されながら
中園 戸田さんは30年以上もアンパンマンの声を続けていらっしゃる。素晴らしいことです。
戸田 今年で37年になりました。こんなに長く続くとは思ってもいなかったのに、ふと気づいたら私も60代後半に。しかも、毎週月曜日の朝10時にスタジオに集まって、その週のぶんを収録するスタイルは37年間ずっと変わっていません。声優チームのみんなは家族のようで、毎回、楽しく収録しています。
中園 『あんぱん』に芸術学校の先生役で出演していただく山寺宏一さんも、『アンパンマン』の声優チームの一員ですよね。
戸田 はい、犬のチーズ役。俳優や司会者としても活躍する山ちゃんが「ワンワン」しか言わない犬の役なんて、今ではありえませんけど(笑)、アニメがスタートした当時はそれだけみんな若かったということですね。
中園 そこから37年たった今も愛されている。子どもたちにとって、それだけアンパンマンは特別な力を持った存在なんですよ。先日も近所を歩いていたら、2歳くらいの男の子がワーワー泣いていたんです。でも、離れたところで三輪車に乗った女の子がアンパンマンの声の出るオモチャを持っていて、その「アンパンマンのア!」という声を聞いた途端、男の子が泣き止んで、声がしたほうをクルッと振り向いた。まるで魔法だなって。