
柴田 母はご近所の人にも助けられたけれど、介護については娘の私が仕切りました。でも私たちには、子どもがいないでしょう? 私は今、夫婦ふたり暮らしだけど、夫を残して先に逝けないですよ、かわいそうで。だから、なんとしてでも長生きしたい。そうすると結局、ひとりになるだろうし、将来どうなるんだろう……。
田村 私は子どもの頃からずっとひとり暮らしに憧れていたの。家族がいたほうが楽しいかな、と思ったこともあるけれど、やっぱりひとりが好き。今ブームの終活にも乗れず、私はなにも具体的に考えてません。いつもノープラン(笑)。「明日考えよう」って。
柴田 それも自然でいいなと思います。何かあったらこの人に連絡してほしい、ということだけ、ちゃんと書いて誰かに渡しておけば。将来、高齢者施設に入るのか、ひとりで暮らすのかなんて、その時の状況によって変わるから、今考えても仕方ないですしね。
田村 あるご夫妻が、終の住処によさそうなシニアマンションを一緒に見にいきましょうと声をかけてくれて、行ったことがあるの。建物も設備も素敵だし、眺望もよくて、自分のお部屋で具合が悪くなったらすぐスタッフに連絡できる緊急ボタンとかもある。いざとなったら介護も受けられるし、完璧なの。
でも、自分にはまったく合わないと思っちゃった。私は商店がたくさんあるごちゃごちゃした町で、生活感がにじんでいるお部屋で暮らすのが好き。あまりにもきれいで、お姫様が住んでいるようなところだと、どういう顔をしていいかわからない。
柴田 わかる、わかる。私たちみたいに、好きなように生きてきた人間には、そういうところは……。
田村 向いていないわね。夫のほうはそこに入りたがったみたいだけど、妻のほうは小声で、「やっぱり住み慣れたところがいいわ。隣近所とも長いつきあいだし」と。私も同感です。