「体のバランスを見ながら、どのように表現していこうか、追及していきたいと思います」

榎本釜次郎たちの時代を変える力強さ

この作品の面白さは、旗本の息子としてエリート街道を突き進んできた釜次郎が、思うような成果を出せず、たどり着いた先が、蒸気船の船底最深部だったこと。黒船来航後、幕府は日本初の海軍を養成するプロフェクトを長崎で始め、釜次郎は西洋の航海技術を学ぶつもりでそこに向かいます。

しかし、蒸気船という一番最先端の場所でありながら、彼が配属されたのは日の当たらない最下層、通称「ぼっとん」。そこには、船を動かす原動力となる灼熱のカマに、石炭をくべ続ける男たちがいて、釜次郎もその一人になる。一番底辺にいる奴らが巨大な船を動かして、さらに船だけでなく時代も動かしていく。

この舞台では、世間から見放されて最下層にいる男たちが、真っ暗な船底で「俺たちで時代を変えてくんだ!」という力強さを持っています。そしてそれは、今の時代でも共通する部分があるのでは、と。

社会の中での不満があるとしたら、国民ひとりひとりが、考えを持って選挙に行く、自分で立候補するといった行動ができる。当事者意識を持ってそんな底力を出していくことが、新しい時代を切り拓くことに繋がるかもしれない。そう思うと、今の時代に生きていても、刺さるところがあるストーリーだと思います。