近所に1人、がんやほかの病気も患い、何年間も入退院を繰り返しているおばさんがいた。このおばさんの病気が治り、表に出て来るようになると、さらにやりにくい状況となる。
当時、私は子連れOKのハンドメイドの教室を自宅で主催していた。このことに関しては珍しくおばさんたちも「親子で楽しめる場を提供するのは立派な社会貢献や」とほめてくれ、遠方から教室に通う方が、わが家の前に車を停めることを黙認してくれていたのだ。
しかし病気が治ったおばさんが、ある日「いくら道が広くても、こういうことを許してはいけない」と言い出した。そこで近くに駐車場を借りることにしたところ、そのおばさんは駐車場の持ち主のところへ行き、常識がない、迷惑な人だと、散々私の悪口を言ったそうだ。
この頃から私は、もうここには長く住めないな、と真剣に考え出す。夫にはこれまでも何度か泣いて引っ越しを訴えていたが、そのたびに「まだローンもたくさん残っているのに手放せるか」と言われて喧嘩になっていた。
結局、きっかけとなったのは息子だった。正確には息子の遊び仲間が、わが家の前でボール遊びをしていて、近所のおばさんたちの大切な花や植木を折ってしまったのだ。
遊び仲間の親にも連絡し、一緒に謝りに行ったが、おばさんたちの怒りはなかなか収まらず、ボールを捨ててしまえ、と言われた。ここまで近所の人たちを怒らせてしまったら仕方ないと、ようやく夫も引っ越すことに同意した。
今は子どもの進学先に合わせ、新築で購入したマンションに住んでいる。ほとんどの家が表札を出さず、回覧板もない。私はいつの間にかあの頃の近所姑たちと同じ年齢になった。
マンション内に親しい人はおらず、隣の人ともいただきものの交換をするくらいで、深い話はしない。それはそれで少し寂しい気もするが、やはりあのおばさんたちのように、ご近所とベタベタする気はまったくしない。