20代の頃の自分に仕事が来なかったのは、僕が「使いにくさ満載」だったからだと思います。だいぶとんがっていましたし、演技の幅も狭いから、ただただ自分のこだわりを前面に押し出すことしかできなかった。

アニメ『遊☆戯☆王デュエルモンスターズ』に出演したときに、音響監督を務めていた声優の三ツ矢雄二さんに「君は本当に頑固だね」と言われてしまったくらい。

自覚はしていなかったのですが、「ここの芝居はこうしたい」という思いがものすごく強かったのだと思います。

おかげさまで、今は収録で「頑固」と言われることはありません(笑)。年をとってテクニックが身についてきたことで、監督のリクエストに応じたうえで自分なりの表現をミックスできるようになってきました。若い頃は技術が未熟でそれがうまくできずに、独りよがりの芝居になっていたのでしょう。

だけど、今でもものづくりの現場では「こだわりがめちゃくちゃ強くて、他人の意見を聞かないよね」と思われがち。そんなこと、まったくないんですよ(笑)。

たしかにこだわりは人より少し強いけれど、もともと自分の意見を押し通すタイプではなく、若い頃から人と喧嘩をしたり怒ったりすることもありません。神経質そうともよく言われますが、全部この顔のせいなんじゃないかと思っていて(笑)。

世間のイメージは、「机の上を常にビシッと整理整頓していそう」。でも実際は、机の上なんてグチャグチャです。

とはいえ、この見かけや声のおかげで、もしかしたら「ひとくせある役」をやらせていただけているのかもしれません。ドラマや声の仕事でも、「ほかの人とはトーンが違う」とよく言われます。

もしそんなある種の違和感を面白がっていただけているのであれば、俳優としてはありがたい限りです。