「ようやく食べられるようになったのは、アニメ『テニスの王子様』でメインキャラクターの声を担当してからです」(撮影:野村佐紀子)
〈発売中の『婦人公論』7月号から記事を先出し!〉
現在、《イケオジ俳優》としてブレイク中の津田健次郎さん。多くの人が「どこかで耳にしたことがある」と思うほど、声優やナレーターとして長く活躍してきた、その声には唯一無二の魅力がある。ベテラン声優が、50代を迎えて俳優としての道を突き進む理由は――(構成:内山靖子 撮影:野村佐紀子)

前編よりつづく

アルバイトで食いつないだ20代

「演劇集団円」の入団試験に落ちた後、知り合いのツテを頼って舞台系の小さな事務所に入れてもらったのですが、覚悟していたとはいえ、まったく食えないし仕事がない。

24歳のときに、アニメ『H2』のオーディションに受かって声優デビューしたけれど、声の仕事も半年に1本呼んでもらえる程度。相変わらずカツカツの生活でした。

そのため、時間に自由が利くバイトを転々としていましたね。宴会場のボーイは配膳があまり好きではないし、引っ越しのバイトはとにかく疲れる。

そのなかでなんとか続けられたのは、コールセンターの仕事。電話口でクレームを言われても、自分とは縁もゆかりもない人たちだからか、ストレスが溜まることもなくラクに時間が過ぎていきました(笑)。芝居のこと以外は省エネで生きていたと思います。

ようやく食べられるようになったのは、アニメ『テニスの王子様』でメインキャラクターの声を担当してからです。この作品が火つけ役となり2.5次元ミュージカルが大ブームになったことで、僕の仕事も一気に増えました。

それでも当初は怖くてバイトを辞めることができず、さすがにもう辞めてもいいかなと思えるようになったのが、31歳のときでした。