田村セツコ
楽しくおしゃべり。昔、星の王子さまミュージアムで買ったお人形は、安全ピンでブラウスに留めています。(写真:『田村セツコの私らしく生きるコツ 楽しくないのは自分のセイ』より)
人生は計画どおりにはいかないことも多いものですが、87歳のイラストレーター・田村セツコさんは、「どんなときでも、ピリピリした緊張感を持たずに生きていけたら」と話します。今回は、田村さんの著書『田村セツコの私らしく生きるコツ 楽しくないのは自分のセイ』から一部を抜粋し、毎日がきっと楽しくなる、自分らしく生きる秘訣を紹介します。

恋愛をまったくしなかったわけじゃないの

私は今まで、ずっと独身です。

ほかのことではストップがかかるまでペラペラ話す私が、恋に関する話では、ピタッと無口になるのが新発見でした。

恋愛をまったくしなかったわけじゃないの。けっこう多かったかもしれないわね(笑)。気が多い? 自分でもその辺はもう忘れましたけど。

昔、母に「あんた、いったいどうなってるの? いい人がいないわけじゃないんでしょ? Aさんは?」と聞かれ、「あれは友だち」と答えると、

「Bさんは?」

「あの方も友だち」

「あんた、そんなことばっかりしてると、『舞踏会の手帖』になっちゃうわよ」と言われたことがあります。母はいつもうまいこと言うの。

『舞踏会の手帖』というのは、昔のフランス映画で、若くして未亡人になった主人公がかつてのボーイフレンドたちを訪ねて回るという話なのだけれど、月日が流れる間に、すっかり彼らも様変わりしていて……というあらすじだったかしら。友だちがいっぱいいて、まんべんなくおつきあいをしていた私のことを、母が心配して言ったんです。