高校の卒業アルバムをお母様と眺める(写真提供:野口さん)

妻は僕に黙っていてくれた

先日、上京したときから、ずっと支えてくれていた母が息を引き取りました。それも、2日間にわたるバースデーコンサート初日の2月18日。とても偶然とは思えないんです。

実は、母は昨年の12月頃から体調が思わしくなく、入退院を繰り返していました。おふくろが行きたい場所に連れて行き、できるだけ一緒に過ごすようにして。僕が両方のほっぺにチュッチュなんてすると、ものすごく喜んで、なんだか面白い顔で笑うんですよ。

おふくろが好きな古い歌を一緒に歌ったりね。そうこうしているうちに食欲も少しずつ戻ってきて、僕は少し安心していました。

それでコンサートの前夜、妻(タレントの三井ゆりさん)にこう言ったんです。「もし母親に何かあったとしても、僕には伝えないで。コンサートがすべて終わってからにして」と。

もともと僕と母親との間には、「この仕事をしていたら、最期は会えないこともあるよね」という暗黙の了解がありました。

「中途半端に母親のことを思いながら歌うコンサートなんてありえない。ステージに立つときはまっさらな自分でいたいから、言わないでね」。夜ベッドに入るときに、自分の言葉を振り返りつつ、「なんで僕はこんなこと言ったのかな?」とは思っていました。