進化するAIとロボット(写真はイメージ/写真提供:Photo AC)
進学、就職、将来設計――。いまの中高生たちは、かつて親世代が頼りにしていた「こうすればうまくいく」という成功モデルが通用しない時代を生きています。人口減少、AIの急速な進化、物価高といった激動の中で、何を指針に未来を選べばいいのか。思想家・内田樹さんは「自分が生きたいように生きればいい」と言います。答えのない時代に生きる中高生に向けた著書『どうしたらいいかわからない時代に僕が中高生に言いたいこと』より一部を抜粋して紹介します。

好きなことをやりなさい

日本はこのあともう経済成長はしません。これまでの30年もしていませんが、これからもしません。むしろ経済は縮減してゆく。

かつて日本は42年間にわたってGDPランキングでアメリカに次いで世界第2位でした。現在も第3位(2023年には第4位)ですが、一人当たりのGDPは第24位まで低下しました。

株式時価総額の世界ランキングで、2000年ではトップ30のうち21社が日本の企業でした。現在トップ30に日本の企業はありません。21社がアメリカ。あとは中国と韓国と台湾とサウジアラビアです。

世界経済に占める割合、日本はかつては16%だったのだけれど、現在は6%です。日本だけが沈んでいく。そこにコロナが来た。それが君たちが直面している状況です。

そういう前代未聞の状況に日本社会はあります。

ですから、君たちがこれからどのような技術や能力を身につけるか、どういう進学先を選ぶか、どういうところに就職するかという時に、これまでならご両親や学校の先生に相談して、「こうすればうまくゆく」という過去の成功体験に従っていたらよかったけれど、申し訳ないけれど、学校の先生たち親たちの持っている進学や就職に関する知識はこれからは使いものになりません。