涙は心をリセットするのにとてもいいもの
『千の風になって』が流行った当時には、会場にいらっしゃる皆さんがとにかく涙されるので、僕ももらい泣きを堪えるのが大変な時がありました。記憶に残っているのは、あるコンサートで最前列センターに丸刈りの男性が座っていらっしゃった時です。その横には、その方によく似た丸刈りの若い男の子3人が席についてました。三兄弟とそのお父様でいらっしゃるというのは誰が見ても明らかな感じです。最前列センターを男性陣が占めることも珍しく、僕はその方たちのことがなんとなく気になっていました。そしてコンサート終盤、『千の風になって』を歌い始めると、その方たちが揃って号泣し始めたんです。「これは…三兄弟のお母様を亡くされたんだろうな」というのがわかってしまって、僕はあろうことか演奏中に声を詰まらせてしまった。僕と長年組んでくれているピアニストの小島さやかさんも驚いて顔を上げたところで客席が目に入ってしまい、彼女も涙を堪えられなかった、なんていうこともありました。今は、泣いてしまって歌えなくなることがないように心を移すやり方を身につけましたけれど。あの時は参りました。
今は『千の風になって』よりも他の曲で涙される方が多くなったように感じます。『瑠璃色の地球』も昨年歌いましたが、この曲で涙される方も多かった。
涙というのは、心をリセットするのにとてもいいものだと感じています。悲しいことがあった時も、嬉しいことがあった時も、人は涙を流してさあもう一度頑張ろうと思う。涙を流したことで明日への活力が湧いてくる。僕のコンサートで思う存分涙を流して「よし明日からもまた頑張ろう」という気持ちが心に満ちていくようでしたら、本当にありがたいことだと感じます。