秋川雅史さん
声楽家の秋川雅史さん(撮影:本社・武田裕介)
『千の風になって』で知られる声楽家の秋川雅史さん。今年もクラシックからポップスまで幅広いジャンルを歌い上げるコンサートを開催します。秋川さんは彫刻家としても毎年、二科展入選を果たし、プロ並みの腕前を披露してきました。そんな芸術家として2つの顔を持つ秋川さんは、子育ても“生きがい”として、携わってきたそうです。秋川流・子育て論についても伺いました。(構成=岡宗真由子 撮影=本社・武田裕介)

コンサートではミスを気にせずエネルギーを伝えたい

9月にオペラシティでのコンサートを予定していて、今はその準備に入ろうというところです。曲目は毎年一新するのですが、今年の分はまだ決まっていません。気持ちを込めて歌うためにも、いつも直前に選曲を固めます。一方、コンサートでお話する内容については随分と前から練ってきました。クラシックを知らない方にはクラシックを知って欲しいし、クラシックの裾野を広げる案内人でありたいというのが僕のスタンスです。なので、クラシックに馴染みがない方にも興味を持っていただける話をいつも用意しています。歌よりもそっちが楽しみだと言われることもありますね。(笑)

和泉元彌さんにお招きいただいて狂言の舞台を見に行った時も、勉強していった分、余計に楽しいと感じました。背景のお話を知っているだけで、舞台の楽しみが倍増するとその時も実感しました。

コンサートでお話するネタはそれこそ一年かけて探しています。友達との雑談中にも「これは使える!」とおもえば、会話を中断して即座に携帯にメモ。そうして練った内容を台本にしていますが、お客さまの反応次第で、アドリブも加えていきます。コンサートはやはり皆様の表情を見ながら、そういったことができるのも楽しいんです。

歌も同じで、コンサートはお客さまの顔を見ながら歌うことができるので、この曲のこの部分でこういう感情になるんだとか、手にとるようにわかってしまう。

だからこそCDの歌い方とコンサートの歌い方って全然違っているんです。CDは何度も聴いていただくために、ミスがないよう細心の注意を払って完璧にレコーディングします。一方、コンサートでは多少のミスがあろうとも、目の前にいる方に気持ちが伝わるようにとありったけの情熱を込めて歌います。それが伝わったというのはこちらも手応えとして感じ、尚更魂を込めて歌うことができる。そんな醍醐味があるので、コンサートで歌うのが僕は一番好きです。

秋川雅史さん
「コンサートでは多少のミスがあろうとも、目の前にいる方に気持ちが伝わるようにとありったけの情熱を込めて歌います」