本誌2024年10月号では、回文作りの基礎から応用までを紹介した

SNS上で発表している、という状況もあって、僕が作った回文は、「コジヤジコ作」と認識していただけるものがほとんど。ただ、世にある多くの回文は、詠み人知らずというか、誰の作品かがはっきりしないまま、今日に至っているのが現状です。

今回は「自作の回文」であることが条件でしたので、これまでに見たことがない作品かどうかを念頭に置きながら、選考を行いました。回文作家として、それなりの量の作品に触れてきたつもりではありますが、僕の見極めが絶対と言い切れないというのが、正直なところです。

作品が作家の名前とセットにならない。作品のダジャレ的な要素がひとり歩きする。そういった点には、回文作家のひとりとしてジレンマを感じます。長い作品がより優れているとは思いませんが、話の筋が通った長いものを作るのはそれなりに骨が折れるもの。苦心して作った人がいるにもかかわらず、パズル的な面白さだけが注目され、文学のひとつとして捉えられていないから、誰も作者の存在を気にしないのでしょう。

実際、「逆さに読んでも同じ音になる」こと以外、ルールやこだわりは人によって異なりますしね。これを表現しよう、訴えようと思って作るのではなく、半分は偶然できたようなものという点も大きいかもしれません。

今回、親子でそれぞれ挑戦し、投稿してくださったのではないかと見受けられる方も何組かいらっしゃいました。挑戦のハードルが低いぶん、回文は「表現の一歩目」としてもおすすめです。ひとりで取り組むもよし、親と子・孫、夫婦、友人同士、一緒に作ってみる時間も楽しいものかもしれません。