(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)
帝国データバンクの発表によると、2025年上半期に倒産した医療機関は全国で35件となり、倒産が過去最多となった2024年を上回るペースとなっています。このような状況のなか、京浜病院院長の熊谷頼佳先生(「頼」は、正しくは旧字体)は「地域に必要不可欠な中小病院の多くが、経営難で存続が難しくなっているのが実情」と指摘します。そこで今回は、医療制度の過酷な実態について記した著書『2030-2040年 医療の真実-下町病院長だから見える医療の末路』より一部引用、再編集してお届けします。

夜中に大音量の音楽を流し布団を叩く区営住宅の住人

「パンパカパーン、パンパカパパーン、パンパカパーン、ズンチャチャチャ……」

東京都内のある区営住宅3号棟では、真夜中の12時になると、決まって、大音量の音楽が鳴り響く。5階に住む90代の老婆が、窓を全開にして大音量で音楽を鳴らして布団を干して叩き、掃除を始めるからだ。

最初は、「元気なおばあちゃんねぇ」と笑っていた近所の住人たちも、毎晩大音量の音楽が流れるものだからたまらない。

「真夜中に窓を開けて音楽を鳴らすのはやめて欲しい。せめて朝7時くらいにしてください」と、自治会長が丁重に頼みに行ったが、その老婆は意に介す様子もなく、夜中の12時になると決まって大音量の音楽を流し掃除を始めるのだった。

この老婆の場合、真夜中の音楽は序の口で、そのうち5階のベランダから自分の便やゴミをまくようになった。この号棟の前の道路は、年中不快なにおいがただようようになり、「犬か猫かと思っていたら、あの5階の真夜中の音楽婆ちゃんがベランダから尿をまいていたんだって。信じられないわ」と近所の住人が憤慨しながら報告してきた。どうやら、1階にあるゴミ置き場まで行くのが面倒になり、トイレにゴミを流したらトイレが詰まって使えなくなったらしい。しばらくは風呂場で排泄していたが、そこも詰まったので、ベランダから投げ捨てることにしたようだった。