悪徳医療グループに乗っ取られた病院も
東京都内で、創業者一族が2つの中小病院を経営していた医療法人は、債務超過で経営がたちゆかなくなりオーナーが交代した。一つの病院は診療所に縮小し、もう一つの病院は別の名前で診療していたが、理事長がたびたび変わるなど経営が混乱し、所有不動産を差し押さえられて倒産した。年商は約9億円、その負債額はそれより多い約12億円にかさんだと報じられた。その後も医療従事者が集まらなかったようで、ひっそりと休診し廃院になった。
近隣の病院でも、借金付きで売却されたらしいという噂が立ち、なんだか様子がおかしいと思っていたら、そのうち病院は廃院になり、外資のホテルになったところもある。病院を買い取った業者は、結局、土地と建物を安く手に入れて転売するのが目的だったのだ。
そうかと思うと、地価が比較的高い時期に病院を売却して、ハッピィリタイアした医師もいる。都内の一等地にあった外科系の病院はとても評判がよかったが、地価が上がったときに院長が病院の土地を売り、30億円もの利益を得たと聞いた。先祖代々受け継いできた土地だったようで、勝手に土地を売ったことでおじと甥とで大喧嘩になっていたが、子どもか孫くらい年の離れた若い妻と再婚して嬉しそうだった。その病院の跡地にもホテルが建っている。
悪徳医療グループに乗っ取られた病院もある。都内の私鉄の駅の近くに、ある病院が倒産した後、新しい病院ができた。私の病院からもわりと近かったので、近隣のよしみであいさつに行ったのだが、その対応はこれが同業者に対する態度なのかと驚くほどひどかった。
同じ地域であれば患者を紹介し合ったり、連携したりすることがあるので、良い関係を築いておく必要がある。ほかの病院の院長が来たら、社交辞令でも笑顔で出迎えるのが一般的だ。ところが、病院の事務室で声をかけた途端、事務長に何しに来たんだという顔でにらまれ、院長にあいさつもできないうちに追い返された。同業者にこんな扱いを受けたことはなかったので本当にびっくりした。事務長は都内の医療業界では有名な悪徳乗っ取り屋だった。案の定、この病院の評判は悪く、不渡りを出して倒産した。マネーロンダリングのために病院を買収したのではないかと推測している。いまはまったく別の病院になって建物も新しくなり、大学病院の傘下に入って経営は安定しているようだ。