介護業界の動き
一方、介護業界では、外資系ファンドが、大手の介護サービス会社を買収する動きが広がっている。2020年には、米国系ファンドのベインキャピタルが子会社を通じて、介護業界最大手であり、在宅介護事業だけではなく有料老人ホームの経営や医療事務事業、保育事業などを展開するニチイ学館を持つニチイホールディングスに対してMBO(経営陣が参加する買収)を実施し、経営権を取得した。「買い付け額は総額で1000億円になる見通し」と、日本経済新聞が2020年5月8日に電子版で報じたが、2024年6月には、今度は日本生命が約2100億円でニチイホールディングスを買収した。米国系ファンドは日本生命にニチイホールディングスを売却することでかなりの利益を得たとみられる。
2021年には、北アジア専門の投資ファンドMBKパートナーズが、全国で在宅介護事業を展開する業界大手のツクイホールディングス(現・ツクイ)を買収した。ツクイホールディングスは、1969年に神奈川県横浜市で津久井土木株式会社としてスタートした建設会社だったが、1980年代に福祉事業部を新設し訪問入浴事業を始めた。介護保険制度の開始と共に介護事業を拡大し、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅、介護関係の人材派遣会社も運営している。2004年にはジャスダック証券取引所に株式を上場。2012年には当時の東証第一部に上場を果たす大企業に成長した。2021年2月にMBKパートナーズによる株式公開買い付けが行われ、2022年4月に上場を廃止した。
さらに、MBKパートナーズは、2023年には、デイサービスやショートステイなどの在宅介護事業や介護付き有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅を展開するSOYOKAZEを買収した。2024年には有料老人ホームなどを運営するHITOWAホールディングスを買収し、さらに介護ビジネスを拡大する方針のようだ。
介護報酬が確実に得られる日本の介護業界参入は手堅く、海外の企業にとっても魅力が大きいわけだ。医療業界には株式会社が参入しにくいものの、同じように手堅い診療報酬を狙って、密かに海外資本が参入している可能性もある。