お茶の不思議

「でも、不思議です」

瀬戸田くんが言った。

『雑草教室-図鑑が教えてくれない植物たちのひみつ』(著:稲垣栄洋/中央公論新社)

「お茶の葉って木の枝についているんですよね。地面から離れた場所にある葉っぱが、雑草の発芽を抑えるって、おかしくないですか?」

そういえばそうだ、と出雲さんは思った。

どうして、雑草の発芽を抑える物質が、葉っぱの中にあるのだろう?

「良い質問だね」

稲垣教授が言った。

「カフェインやカテキンは、毒性のある物質だ。実際には病原菌や害虫から身を守るために、葉っぱに蓄えられている。この毒性のある物質が、副次的に雑草の発生も抑制するのだ」

(???)

稲垣教授の説明に、出雲さんの頭の中には次々に疑問が湧いてきた。

お茶サークル(※)でお茶農家を訪ねたときには、「病気や害虫が困る」と言っていた。カフェインやカテキンが病原菌や害虫から身を守るためのものであるとしたら、どうして、お茶の木は病気にかかったり、害虫に食べられたりするのだろう。

それに、カフェインやカテキンが毒性物質だとしたら、人間はどうして平気で飲んでいるのだろう。

(※)出雲さんが所属している、お茶の勉強をするサークル