東京大空襲で亡くなった父の両親と妹の戒名の謎が浮上

イメージ(写真提供:Photo AC)

父は謎の多い男だったが、亡くなって27年たつのに、また謎が浮上した。

先日、私の友人が訪ねてきた。彼女は私の母を知っていて、仏壇を拝ませてくれと言った。仏壇の前には、父と母と兄の遺影がある。遺影といっても、日常の中で撮影した写真だ。彼女は「こういう普段の写真を飾るのもいいわね」と言ってから、位牌を見て大声を出した。「どうしたの!この戒名、すごい金額じゃないの!」。

私はあわてて「東京大空襲で亡くなった父の両親と妹のお位牌なの。父は難病になってから、『葬式無用、戒名不用』と、実業家の白洲次郎の遺言を真似して私に言った。母も兄も、自分が死んだ時もそうしてくれと言うので、3人とも直葬で、お位牌はなくて写真だけ。お墓は都立霊園だから、戒名でなくてもよいので、俗名(普段の名前)を刻んだ」と説明した。私は、友人に位牌の宗派を教えた。

すると彼女は、「この戒名は違うと思う。お寺に確認した方がいいわよ」と言われた。いったいどういうことになっているのだろう?

父から聞いていた寺院に、ずうずうしくも電話をして、戒名について聞いてみた。もちろん、その理由は言わないつもりだった。副住職が、戒名について説明してくれて、別の宗派ではないか、ということが分かった。とても親切に説明してくれたので、申し訳なくなり、電話をした理由を話してしまった。副住職は、父の前妻のことを知っていて、猫が好きだったことを教えてくれた。父も猫が大好きだった。