「安心しきったその様子を見て、「私のことを待っていてくれたんだ……」と感じました」撮影:清水朝子
本日4月4日は公益財団法人・日本財団が制定した「養子の日」。特別養子縁組制度への理解を深める記念日です。元宝塚トップスターの瀬奈じゅんさんは、舞台俳優の千田真司さんと結婚後、一時は仕事をセーブして不妊治療に取り組みました。しかし、ある思いから治療を中止。2017年、実の親が育てることができない赤ちゃんを引き取り、「特別養子縁組」で、晴れて法律のうえでも親子となりました。翌年『婦人公論』で決断に至るまでの思いを明かした記事を再掲します。(撮影=清水朝子 構成=菊池亜希子)

「私のことを待っていてくれたんだ……」

2017年の初夏、わが家に待望の赤ちゃんがやってきました。初めて対面した日は、前もって「まだミルクを上手に飲めない」と聞いていたので、少し心配しながら病院へ向かったのです。ところが、腕に抱いたら、何のためらいもなく私の手からおいしそうにミルクを飲んでくれた――! 安心しきったその様子を見て、「私のことを待っていてくれたんだ……」と感じました。

私たち夫婦は2012年に結婚。二人とも大の子ども好きで、すぐにも授かりたいと願っていました。彼は結婚を機に「チャイルドマインダー」という保育の資格を取ったほど(笑)。住まいも、子育てのしやすさを優先して選びました。

当時、私は38歳。決して若くはなかったけれど、妊娠できると信じて疑いませんでした。でも、年齢を考えると遠回りしている時間はない。それで結婚と同時に産婦人科の扉を叩きました。その後、2年半に及ぶ不妊治療が始まったのです。

周囲に迷惑をかけないよう、前々から決まっていた公演を終えたところで、舞台の仕事はすべて休みました。本格的に治療に専念することにしたのです。

結局、私は7回、体外受精をしました。そのうちの5回は、受精卵が着床しても、子宮内膜に厚みが足りないため、卵が育ち続けることができなかった。

不妊治療の間は、毎日のようにホルモン剤を投与します。まずは、卵子を成長させるホルモン剤、体外受精をした後は、受精卵が着床しやすくなるホルモン剤、そして、着床した受精卵が成長し続けることができるよう、子宮内膜をフカフカにするホルモン剤。飲み薬に膣錠、通院して注射と、目的によって何種類もの薬を使います。