特別養子縁組という選択を、1年間考え続けて
NPO法人などの民間の団体や病院があっせんする特別養子縁組(赤ちゃん縁組)は、事情があって子どもを育てられない母親と出産前から話を進めることが多いようです。養親になりたい夫婦のほうから赤ちゃんの性別などの指定はできませんし、病気や障害の有無もわかりません。命を預かるわけだから、生半可な気持ちで手を挙げてはいけない。そう思って、そこから1年ほど悩みました。
特に気がかりだったのは、親族に受け入れてもらえるかどうか。私たち夫婦が子どもを迎えるということは、お互いの親族にとっても、大きなことですから。
まず、反対されるのを覚悟して私の母に話しました。すると、意外にも手放しで喜んでくれたのです。母は、大動脈解離で生死の境をさまよったことがあり、そのとき、「自分がこの世に戻ってきたのは、何かお役目があるからに違いない」と思ったそうです。「これだったんだわ!」と腑に落ちたようで、赤ちゃんの世話を楽しみにするあまり、まだかまだかと催促されるほどに。(笑)
夫の両親も、「親になれるなら、なったほうがいい」と賛成してくれました。私の父だけは「自分は血のつながりは大切だと思っているが、二人が決めたことなら協力する」と、微妙な言い回し。本音は反対なのかも、と少し心配でしたが、蓋を開けてみたら、孫にいちばんデレデレです(笑)。そんなわけで、覚悟していた親族の反対は、拍子抜けするほどありませんでした。
養父母に育てられた友人にも、話を聞きました。「育ててくれた親が、私の親だと思っている」という言葉を聞いたことは大きかったですね。
その後、尊敬する宝塚時代の先輩に悩みを打ち明けたんです。そうしたら、「それ、悩んでいても一生、答えは出ないよ。思い切って飛び込んでみようよ」と、背中を押してくれた。
先輩の言葉は、私の心にストンと落ちて、パズルの最後のピースがピタッとはまった感覚でした。どのような子が来てくれても、たとえ障害があったとしても、それも個性と受け止めよう。そう思い定めることができたのです。
〈後編につづく〉