視聴者の役に立つために
あさイチが始まった当初は、視聴者として専業主婦を想定していたところがありました。でも、今は女性の生き方も多様化して、働いている人もいるし、結婚していない人もいる。リモートワーク中に見てくださる方もいます。子供がいる人ばかりでもない。たとえば、7月には大人の1人暮らしの特集を放送します。結婚して子どもがいる人向けではない企画も増えてきました。
9時台には毎日料理のコーナーがありますが、伝え方も今後変えていきたい。料理を役割としてやらなくちゃいけない人もいるし、得意じゃない人もいる。そういう人たちが前向きに取り組める方法もあるはずです。
今年5月に放送した氷河期世代の特集も反響がありました。日本のこの30年が凝縮されていますし、結婚や就職、働き方や老後、いろんなテーマを内包している。40~50代のこれまでとこれからはしっかり取り上げていきたいと思っています。
6月には、アメリカによるイランへの攻撃について局の解説委員を呼んで取り上げました。普段あまりやらないタイプの企画でしたが、「みんながモヤモヤしている思いを共有しよう」という趣旨です。「そもそもなんでイスラエルとイランはこんなことになっているんだっけ?」と共有することでニュースの見方も変わる。大きな主語で語られているものについて、主語を小さくしてみたらどうなるのかという発想です。
「イランが」「トランプ大統領が」ではなく「私たちの生活は」という視点でニュースを見る。発想を転換すると解釈の仕方が変わってくるという手法で企画を作ることはよくあります。ニュースについて取り上げてほしいという声も多くあります。
番組が長く続いたのは、MCの人柄によるところが大きいと考えています。制作として意識しているのは、「どうやったら見ている人が喜んでくれるか」を突き詰めて考え、「あさイチは私のための番組だ」と思ってもらえること。そして、放送中に届く声をきちんと番組で紹介することが、あさイチの個性であり、強みです。番組へのご批判を紹介することもあります。正直に視聴者の意見を伝えようとしていると思ってくださっていたらうれしいですね。
(川口由貴、油原聡子)