ほどほどに「いい加減」な生き方を許容する
かつて批評家の浅田彰氏は、著書『逃走論』(ちくま文庫)の中で人間を「スキゾ人間」と「パラノ人間」という二つの分類で示したことがあります。スキゾ人間とは、その時々の興味に応じて柔軟に行動や思考を切り替えられる人です。一方、パラノ人間は一つのことに固執し、一貫性を保つタイプです。浅田氏は1980年代から、これからの時代はパラノ的な生き方よりもスキゾ的な生き方が社会に適応的であると指摘していました。
実際、現代の社会はインターネットの普及により時間や状況が細分化され、次々と新しい情報や状況に対応する能力が求められています。つまり、まさに「今、ここ」に集中して傍から見たら「適当でいい加減」に生きるスキゾ人間的な生き方が、より生きやすい時代へと移り変わっているのです。
人生に整合性や一貫性を求めることは必ずしも間違いではありませんが、それに囚われすぎることなく、ほどほどに「いい加減」な生き方を許容することで、「今、ここ」の瞬間を自由に豊かに生きることができるでしょう。
※本稿は、『60歳からの脳の使い方』(扶桑社)の一部を再編集したものです。
『60歳からの脳の使い方』(著:茂木健一郎/扶桑社)
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