背中の丸まりが強い高齢者の「死亡リスク」
2004年に『アメリカ老年医学会誌』に掲載された論文は、「背中の丸まりが強い高齢者は、そうでない人に比べて死亡リスクが約1.44倍に上昇する」という研究結果を示し、「過度の脊柱後弯は、それ自体が死亡リスクの独立した予測因子である」と結論づけています。
しかも、年齢、性別、骨粗しょう症、喫煙、体重、運動習慣、肺機能などの要因を加味しても、結論は変わらなかったというのですから驚きです。
また、アメリカの内科学会が発行する『アナルズ・オブ・インターナル・メディシン』という医学誌に2009年に掲載された論文でも、「背中の丸まりが顕著な人は、そうでない人と比べて死亡リスク率が1.58倍に上がる可能性がある」という、同じような指摘がありました。
死亡率が上がる要因として、転倒や骨折のリスク増加、呼吸機能の低下(肺の圧迫)、糖尿病や心疾患などの慢性疾患のリスク増加、食欲不振や栄養不足、うつや社会的孤立などを挙げています。
そして最近の前向きコホート研究(BMJ open 2022)では、日本人の高齢者を対象に、背中の丸まりが将来の死亡リスクにどう関係するかを調査した結果、背中の過度な丸まりは、丸まりがない人に比べて死亡率が約2倍(1.99倍)に高まることが報告されています。
これは、背中の丸まりが、見た目の問題だけでなく、呼吸機能の低下や転倒・骨折を通じて命に関わるリスクにつながることを示唆しています。
たかが背中の丸まりと、軽く考えてはいけません。
脊柱後弯は、ともすると命にかかわる、「死への入り口」ともいうべき疾患です。その弊害は「老けて見える」だけにとどまらないことを理解し、しっかりと対応にあたる必要があるのです。