「良い歯医者さんに巡り会えていたら、この歯を失うことはなかったのに……」年を重ねてそんな後悔をしないためにも、自分にとってベストのかかりつけ歯科医を見つけることはとても大切です。けれど、厚生労働省の調査によると、2018年、日本全国にある歯科医は6万8000院以上。この数、なんとコンビニエンスストアよりも多いのだとか。果たして、良い歯科医の見極めポイントとは……? 草の根歯科研究会代表の岡田弥生さんに聞きました。(構成=浦上泰栄)

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◆妥協せずに理想のパートナー探しを

私は訪問歯科医として高齢者の方が暮らす自宅や介護施設を訪れ、歯の治療や口腔ケアを行っています。そこでお会いする患者さんの多くが、「40~50代のうちに歯の治療をしっかりやっておけばよかった」「10年前にいい歯医者さんに巡り合えていたら、この歯を失うことがなかったのに」「自分の歯で嚙めないと食事がまずい」という反省や後悔を口にされます。

女性の場合、子育て中は毎日忙しくてゆっくり歯磨きができない、通院のための時間が取れなくて多少の痛みはガマンしてしまう……など、歯のケアがおろそかになりがち。だからこそ、子育てが一段落する40代後半~50代になったら、自分の歯や歯ぐきの状態を知り、この先もできるだけ長くおつきあいできるいい歯医者さんを見つけて、歯の健康をしっかり守ってほしいと思います。

とくに更年期以降は、女性ホルモンの分泌量の低下にともなって唾液の量が減少。口の中が乾燥しがちになり、汚れが溜まって細菌が繁殖しやすくなります。歯周病のリスクが高まるこの時期にしっかりデンタルケアをしておくことが、70代、80代になっても自分の歯を残し、美味しくごはんを食べて、質の高い生活を送るために不可欠といえるでしょう。

では、いい歯医者さんの条件とは何でしょうか? 「万人にとっていい歯科医はいません」が、私の答えです。歯の状態は人それぞれ違いますし、「予防に力を入れている」「被せものが上手」など、歯科医師にも得意分野があります。また、治療にかけられるお金も人それぞれです。

まずは、「保険の範囲内で最小限にとどめたい」「多少お金がかかっても見た目を大事にしたい」など、自分がどんな治療を望むのか、どう歯を保っていきたいのかを明確にしましょう。歯科医師探しを始めるのは、それからです。

歯科医師探しは“婚活”のようなものだと思ってください。求める条件に相手がある程度当てはまっていたとしても、最後に決め手となるのは医師との相性です。腕がよいと評判の医師でも、上から目線でものを言い、こちらの質問に十分答えてくれないような人とは信頼関係を結べませんよね。

婚活と同じなのですから、最初に出会った医師とご縁を結べなくても、次、またその次……と、決して妥協せずに理想のパートナーを探し続けましょう。いい医師かどうかを判断するにあたってポイントとなる7つの条件を紹介しますので、参考にしてください。

また、虫歯や歯周病は感染する病気です。理想の歯科医を見つけて自分はしっかり治療しても、夫や子どもの口腔環境が健康に保たれていないと、感染リスクが高まります。家族全員の「歯を守る意識」を向上させることも、歯の健康には欠かせないと覚えておきましょう。