多様なタイプを真に理解するには

「25年前は乳がんに罹ったら誰もが同じ治療法でした」とメルツァー=ブロディは言う。

「今はがんの遺伝子的特徴から治療します。特異性に基づいた的確な治療のおかげで、非常に良い意味で予後が大きく変わったのです。産後うつでは依然として、どのタイプかを考慮せず同じ治療を行っています」

『奇跡の母親脳』(著:チェルシー・コナボイ 訳:竹内薫/新潮社)

いつの日か精密な精神医学的アプローチが産後うつにも適用できるかもしれない。だが彼女は重要な違いも指摘する。乳がんは通常、特定の部位に発生する。腫瘍を生検して分析できる。「人の脳ではできません。そこが問題なのです」

取り組んできたことの一つは、産後うつが脳内でどう現れるかを脳画像から把握することだ。画像研究は産後うつが親の役割に影響を与えるメカニズムや、治療の対象となる部分を特定するツールとなり得る。しかし現時点では研究はかなり限定的だ。

産後うつの多様なタイプを真に理解するには、このプロジェクトが目指す大規模なサンプルが必要となる。従来の画像研究の多くは、一度に10~20人ほどの患者の脳の観察にとどまり、患者を長期にわたって追跡する縦断的な研究もほとんどない。産後の期間や症状など、対象者の選定基準が異なるため研究結果にかなりのばらつきもある。神経活動の評価に使用される刺激も、被験者自身の赤ちゃんの泣き声や写真だったり、あるいはポジティブだったりネガティブだったり、被験者に関連のない素材だったりと多岐にわたる。