(写真提供:山田邦子さん、オフィシャルブログより)

長唄から繋がったもの

最初についたのは90歳ぐらいのとっても真面目なお師匠さんで、所作や着物の着方、挨拶の仕方なども丁寧に教えてくださいました。これは今でも、財産になっています。

当時は、忙しいスケジュールの合間を縫ってお稽古に行くのですが、お師匠さんはまずゆっくりとお茶を入れてくださるんです。こっちは「早く早く」と思っているのに、ゆったりと「最近はどうでしかた?」なんて聞かれる。きちんと一息ついてから、お稽古に入ります。最初はイライラしてしまっていたのが、そのうち、それがあたりまえになっていった。お師匠さんはそういう心の持ち方も教えてくださったのだと感じます。

その後、杵屋勝之弥(きねや かつのぶや)先生に師事して、本格的に長唄を習い、歌舞伎座の舞台にも立たせていただき、2019年には長唄杵勝会の名取として「杵屋勝之邦」(きねや かつのぶくに)の名を襲名しました。お弟子さんも取ったんですよ。でもね。全然うまくならないの(笑)。長唄は奥が深いんです。師匠には「毎日8時間練習してください。20年続ければうまくなりますよ」って言われました。振り返ると20年続きましたねー。自宅でお稽古していると何かが降りてくるんです。姿勢もよくなるし、なにか気分が悪いことを抱えていても、唄うと元気になります。

私はお笑い芸人なので、神聖な発表の場でバカ殿の出囃子によく使われる一節をみなさんに弾いてもらって、私が白塗りのコウメ太夫になって登場するというようなこともやっちゃったりしましたが、今のところまだ破門にはなっていません。(笑)

長唄を始めたおかげで、舞台で夢奴という芸者さんの役も作ってもらえました。当時は唄も三味線もへたくそでしたけど、ひとつ始めれば何かに繋がっていきますよね。

後編につづく

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Room NO.925 第1回公演『ジャニス

期間:2025年8月20日(水)~24日(日)
会場:博品館劇場

作:堤 泰之
演出:三上陽永
出演:
山田邦子
山像かおり
小林美江
藤田記子

橋本祥平
花音
海老澤英紀
水谷あつし

公式サイト:https://no-4.biz/room-no925/janis