事務所の退社は定年退職のようなもの
2019年6月末で39年所属していた事務所を辞めて、フリーランスとしてスタートを切りました。まだ2週間くらいなんですけれど、いろいろなものから解放されて、今、本当に自由です。事務所にはとても感謝しています。タレントスクールを出たわけでもなければ、師匠がいるわけでもない、ポッと出の20歳だった私をよくぞ育ててくださった。
考えてみれば、今回のことは、私の定年退職みたいなものかもしれません。会社勤めをしていた方が、長年所属した場所を去る。59歳ですからね。“定年”はすごくしっくりきました。
リセットしてからのこの2週間は、毎日新しい体験ばかりです。生まれて初めて、請求書というものを書きました。まず近所の文房具屋さんへ請求書用紙を買いに行くところから、です。
店番のおばあさんに「『ノーカーボン』と書いてあるので、カーボン用紙も欲しいのですが」と聞いたら、びっくりした顔で「今の請求書はカーボン用紙なんて必要ありませんよ」って。おばあさんに2枚組で複写する仕組みを丁寧に説明してもらって、なるほど納得。家に帰って書いては破り捨てること5回。ようやく1枚の請求書を完成させることができました。なかなかの達成感でしたよ。(笑)
営業活動もね、すでに2回ほど。仕事を取りにいこうと思いまして。まずは知り合いからということで、お世話になった方に電話をしてアポを取り、喫茶店で待ち合わせました。ひとつはイベントの企画、もうひとつはテレビ番組の企画。
話を聞いていただいた結果、どちらも実現することになったんです。ギャラ交渉も自分でしました。お金の話は難しいものですね。相場がわからないものだから「皆さんどれぐらいなんですか」とか聞いちゃって。先方も「やりにくいなあ」と言っていました。
私が事務所を辞めることを考え始めたのは、実は20年近く前、デビュー20周年を迎えた40歳のときです。それまで次から次へと刺激的な仕事をいただいて、バラエティから歌にドラマにと広がり、私は全力で目の前の仕事をこなしてきました。
それで、20周年にあたってふと振り返ってみたのです。これまで自分は何をやってきたのか、何かを残せたのか、と。そうしたら、命を削るように仕事をしてきたけれど、スケジュールを消化するのに精一杯で、頭の中に何も残っていなかったことに気づいてしまいました。