50年以上研究を続けても、いまだに自分の知らないことや新しい発見がありますから、調査や研究をするのはとても面白い。その結果をまとめた原稿を書くのも楽しいですね。
執筆はパソコンを使っています。今年の3月には、足かけ30年近い研究の成果をまとめた著書『朝鮮半島の住まいと家具の歴史』を出版したところです。私の専門は日本の家具史なので、朝鮮や中国家具の歴史の知識はなかったのですが、調べていくうちに次々と新たな発見があり、本を書いてしまいました。
高価な大型本ですからあまり売れないだろうと思っていたところ、発売後3ヵ月で100冊も売れたとか。ありがたい話です。
「昭和のくらし博物館」は26年前にオープンしました。博物館となっている建物はもともと私の実家で、両親と私たち4人姉妹が1951(昭和26)年から45年間暮らした木造住宅です。家の中にはちゃぶ台や麻の蚊帳、すり鉢や竹箒といった昭和の暮らしに欠かせない家具や道具を展示しています。
「家を残し、くらしを伝え、思想を育てる」がモットーです。昭和の家事には不便さや苦労がありましたが、だからこそ、多くの工夫や知恵が生まれた。その「くらしの哲学」を、博物館の展示やワークショップを通して、来場者の方々に伝えたいです。
毎年8月には「小泉家の戦争」という展示をして、戦争に関するイベントも行っています。今、世界中で戦争が起きており、日本にとっても決して他人事ではない。戦争体験者として、戦争の悲惨さを若い世代に発信していきたいのです。