「日本家具史の分野はまだまだ未開拓なので、研究内容をもっと世に広く知らしめて、後世に伝えていきたい。研究者を育てなくてはなりません」(撮影:藤澤靖子)
東京・久が原にある「昭和のくらし博物館」館長で、生活史研究の第一人者である小泉和子さん。ひとり暮らしをしながら、91歳の今も研究を続けるために、毎日自分に課していることがあるそうです。(構成:内山靖子 撮影:藤澤靖子)

25歳で家具屋のおかみ、35歳から研究の道に

2025年の11月で92歳の誕生日を迎えます。90代になった今も、仕事に対する意欲はあまり衰えていませんね。それは私が日本家具史の研究団体である学会と、「昭和のくらし博物館」を立ち上げた責任があるからです。

日本家具史の分野はまだまだ未開拓なので、研究内容をもっと世に広く知らしめて、後世に伝えていきたい。研究者を育てなくてはなりません。

私が家具の歴史に興味を持ったのは、大学卒業後、25歳のときに家具設計事務所の経営者と結婚したことがきっかけです。

結婚後に工場も建て、私は「家具屋のおかみさん」として、住み込みの職人さんたちの面倒をみる生活を10年ほど続けました。その間に家具の歴史に興味を持ち、ぼちぼち研究し始めて、共著ですが本に原稿も載せています。

35歳で離婚したのを機に、「日本の家具の歴史を専門に研究する人はほかにいない。必要な分野なのでやらなければいけないのではないか」と決意。東京大学工学部建築学科の研究生となり、日本の家具や室内意匠史の研究を始めたのです。