体質と遺伝子
遺伝情報を担うDNAの塩基配列(アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、シトシン(C)の4種類の塩基の並び方)は、ヒトの場合、99.9パーセント同じ配列をしています。しかし、この塩基配列に0.1パーセントほどの違いがあります。この違いにより、私たち一人一人の顔や体、さらには能力といったものに違いが生まれます。
たとえばあるヒトの集団(アジア人やアフリカ人など)において、ある塩基配列の違いが1パーセント以上の頻度で見られる場合、その塩基配列の違いを多型と呼びます。一方で、もし1パーセント未満である場合は、変異(mutation,ミューテーション)やまれなバリエーションと呼ばれます。
この多型にはさまざまな種類があり、1個の塩基が他の塩基に置き換わっている(たとえばAからCに置き換わっている)場合を一塩基多型(single nucleotide polymorphism, SNP<スニップ>)と呼びます。このほかにも、1から数十塩基が欠失あるいは挿入している場合や、ある塩基配列(たとえばCAG)を一つの単位として、この単位の繰り返し回数が個人間で異なる多型などがあります。
ヒトを含めたさまざまな生物には、このSNPがゲノム中に多数あり、このSNPこそが疾患へのかかりやすさや薬への応答性など、体質を決めているのではないかと考えられています。たとえば、アルコール代謝に重要な酵素であるアルデヒドデヒドロゲナーゼ2(ALDH2)遺伝子には、SNPがあることが知られていて、このSNPによって「お酒の強さ」が決まることが知られています。