カフェインの代謝
カフェインの代謝を行うCYP1A2遺伝子にもこのSNPがあります。私たちのゲノムには、母親由来のDNAと父親由来のDNAがあります。このCYP1A2遺伝子の734番目のアデニン(A)がシトシン(C)に変化すると酵素活性が低下します。
つまり、父親からA、母親からAを受け継ぐとカフェインの代謝速度は速く、一方父親と母親の双方からCを受け継ぐと代謝速度は遅くなります(下図)。つまり代謝速度は、AA型、AC型、CC型の順で低下します(5)。
ちなみにコーヒーの摂取量が多いとされるオランダ人では、約54パーセントがAA型だと報告されています(6)。一方日本では、約58パーセントがAA型、約36パーセントがAC型、約5パーセントがCC型だと報告されています(7)。日本では、お茶を飲む習慣があるため、AA型の人が多いのかもしれません。
このようにSNPがみなさんの体質の違いを生み出していて、同じ量のコーヒー(つまり同量のカフェイン)を飲んでも人によってその効果が違ってくるのです。
【参考文献】
(1) Blanchard, J. and Sawers, S. J. European Journal of Clinical Phar-macology, 24 : 93─98, 1983.
(2) 坪井貴司ほか『みんなの生命科学 第2版』,化学同人,2024.
(3) Arnaud, M. Metabolism of caffeine and other components of coffee.In: Caffeine, Coffee and Health. Garattini, S.( Ed.), Raven Press, NewYork, pp. 43─95, 1993.
(4) Balogh, A. et al., European Journal of Clinical Pharmacology, 48 : 161─166, 1995.
(5) Han, X. M. et al., Pharmacogenetics, 11 : 429─435, 2001.
(6) Rodenburg, E. M. et al., American Journal of Clinical Nutrition, 96 : 182─187, 2012.
(7) Ota, T. et al., International Journal of Medical Sciences, 12 : 78─82,2015
※本稿は、『よく聞く健康知識、どうなってるの?』(東京大学出版会)の一部を再編集したものです。
『よく聞く健康知識、どうなってるの?』(著:坪井貴司、寺田新/東京大学出版会)
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