「未恋」の若者

半面、個人的には小林教授の思いも理解できます。それほど近年は、一度も恋愛経験がない「未恋」の若者が増えているのです。

たとえば、内閣府が22年に公表した白書を見ると、20代女性の約5割、同男性の約7割が「配偶者や恋人はいない」と回答し、これまで誰とも(一度も)交際したことがない「未恋」の若者が、女性で約25%、同男性で約40%もいることが分かります。

この「未恋」割合は、本来なら、恋愛経験が増えると考えられる30代でも、20代と約5%しか違いません(女性約20%、男性約35%)。つまり、30~39歳になっても、誰とも交際経験がないままの人が、未婚の女性で5人に1人、同男性では3人に1人以上もいるのです(「男女共同参画白書」)。

昭和のように、条件中心で結婚する「見合い結婚」が主流であれば、いまほど問題はなかったはず。ですが近年、見合いの割合は1割にも満たず(9.9%)、圧倒的多数は「恋愛結婚」です(「第16回出生動向基本調査」)。そんななか、39歳になって誰とも交際経験がなく、かつ恋愛の実践的ノウハウも知らない状態で、いきなりデートを重ねて結婚できるかといえば……、現実はかなり難しいと想像がつきますよね。

また同じ調査で、現在「独身でいる理由」を見ると、25~34歳の男女共に2割前後(男性20.0%、女性18.2%)が「異性とうまくつき合えないから」を挙げています。とくに女性では、「結婚資金が足りないから」(13.4%)など経済難を「うまくつき合えない」が約5%上回っていますから、恋愛力の養成も課題の一つと言えるでしょう【下図】。

<『Z世代の頭の中』より>

※本稿は、『Z世代の頭の中』(日本経済新聞出版)の一部を再編集したものです。

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Z世代の頭の中』(著:牛窪恵/日本経済新聞出版)

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