難易度の高い脚本
ホームドラマも同時進行する。描かれる家族はネルラが一員の鈴木家である。鈴木家は全員が寛が1棟丸ごと所有するマンションに住んでいる。4階に住む寛は頑固で厳格。だが、家族を心から愛している。
人間臭いところもある。ネルラの母親は26年前に亡くなっており、独身なので恋人がいた。ところが相手は既婚者で、夫から法的手続きをとると通告される。
寛は「夫はいないと言っていたのに」と狼狽する。普段は家族の前で威張っているが、身を縮ませ、泣きそうな顔になった。父親の女性問題での失敗は、昭和期から続くホームドラマの鉄板ネタである。
このドラマの脚本は難易度が極めて高い。シリアスな謎解きのシーンの直後にギャグを入れ、不自然にしていないのだから。脚本を書いているのは昨年のNHK大河ドラマ『光る君へ』などを手掛けた大家・大石静氏なのはうなずける。
出演陣も実力者を据えないと成り立たない。殺人の話のあとに視聴者を笑わせなくてはならないのだから。数々の映画賞を獲っている阿部と松、多くの演劇賞を受賞している段田らがいたから生まれたドラマだ。
(高堀冬彦)