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高齢になってからも元気に動き回り、病気にも強い人。病院に行くほどではないけれど、動くのがおっくうで、食欲もわかない人。両者の違いには、「食べ方」があるといいます(構成=山田真理 イラスト=seesaw.)

栄養の偏りが続くうち気づけば病気がちに

最近どうも疲れやすい。体重が減ってきた。病気ではないけれど、調子が出ない。そんなふうに感じているなら、それは「フレイル」の一歩手前かもしれません。

フレイル(虚弱)とは、加齢により、体重の減少、疲れやすさ、筋力の低下など心身の衰えがみられ、そのままでは寝たきり(要介護)になる可能性が高い状態のこと。身体的な変化だけでなく、外出がおっくうになるなど、精神的、社会的な衰えも含まれます。

健康な状態から要介護になるまでの中間にあり、予防と改善ができるのがフレイル。つまり、まだ健康な生活に戻ることができる状態でもあります。人生100年と言われる時代、できるだけ長く健康にすごすためには、フレイルを予防することが重要です。

フレイルは、いくつもの要素が組み合わさって進行しますが、その原因のひとつに「低栄養」があります。こんな飽食の時代に栄養不足? と思うかもしれませんが、加齢に加えて、家庭環境・食環境の変化などで、つい「食べる」ことがおろそかになりがちという人は多いでしょう。

朝はパン、昼はカップ麺でお腹を満たす。夜も家族の帰りがまちまちで、あまり料理を作らなくなった……。栄養が偏ったり、足りなかったり、そんな日々が続いていくと、体脂肪が増え筋力が落ちるなど、知らないうちにフレイル予備軍に。

私は大学で教える以前、病院で入院患者さんの栄養管理と食事治療を行ってきました。そこで実感したのが、自分の体と向き合って正しく食べている人は、病気になっても強く回復も早いということ。一方、「病気になったのは食事をおろそかにしていたからだ」と悔やまれる人も少なくありません。