江戸のメディア王として、日本のメディア産業、ポップカルチャーの礎を築いた人物“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の生涯を描く大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』。ドラマ内では浪人・小田新之助がこの世を去りました。平賀源内のもとで蔦重と出会ったのち、松葉屋の女郎・うつせみと夫婦となった新之助でしたが、いずれも非業の死を遂げることに。演じた井之脇海さんにお話をうかがいました。(取材・文:婦人公論.jp編集部 吉岡宏)
小野花梨さんと安田顕さん
妻のふくを演じた小野花梨さんは<手の内を明かさない役者>という印象を覚えています。
ふだんは割とひょうひょうとされているのに、カメラが回った瞬間、すごい芝居をしてくる。スイッチのオン・オフがしっかりしているというか、役に入って、カメラが回りだした時の踏み込む力がすごい。それは収録をご一緒しながら何度も感じましたし、うらやましくもありました。
ふくが死んだシーンで、死に顔を初めて見た新之助が崩れ落ちる、という演技をするために、その瞬間までなるべくふくの顔を見ないようにしていたのですが、小野さんもそれを察したのか、本番に入るまで、あくまでふくではなく小野さんとして、ふざけてくれたりして。
おかげで、収録本番で初めてふくの最期と対面できたのは有難かったですね。

(『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』/(c)NHK)
そして平賀源内を演じられた安田顕さん。
空き時間にはいろいろと雑談をさせていただいたのですが、普段のにこやかで、どこかつかみどころのない安田さんが、いざ芝居になると、急に芯を食ったような演技をされるのも、すごいなって。
特に印象深かったのは、源内先生が蔦重に「耕書堂」の名前を授けるシーンでしょうか。
僕自身のセリフはなく、ただそばにいるだけなんですが、安田さんの「書をもって世を耕し、この日の本をもっともっと豊かな国にするんだよ」のセリフを前に、本当に鳥肌が立って…。
「ここからいよいよ蔦重の物語が始まるんだ」と心が震えた、特に印象深いシーンです。