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日本のメディア産業、ポップカルチャーの礎を築き、時にお上に目を付けられても面白さを追求し続けた人物“蔦重”こと蔦屋重三郎の生涯を描く大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK総合、日曜午後8時ほか)。ドラマが展開していく中、江戸時代の暮らしや社会について、あらためて関心が集まっています。一方、歴史研究者で東大史料編纂所教授・本郷和人先生がドラマをもとに深く解説するのが本連載。今回は「改名」について。この連載を読めばドラマがさらに楽しくなること間違いなし!

毛利重就という大名について

毛利重就という大名がいました。と書いただけで、歴史好きな方は、ああ、このくらいの時期の人だな、とイメージします。

一つの可能性は室町時代もしくは戦国時代の人ですが、そうであれば守護大名とか戦国大名と書きます。

ただ単に大名といえば、普通は江戸時代。とすると、大名は将軍と関係をもっているはずだから、「重」という字は家重将軍から拝領したはず。となれば、重就は家を継ぐとき、おそらくは20歳前後に9代将軍に拝謁したはずなので、まあ、だいたいいつごろの人かが分かる、という寸法です(ちなみに1651年に由井正雪の乱が起き、1701年に松の廊下の刃傷。1751年に徳川吉宗死去。1800年前後は大きな事件がなくて、寛政の改革が終了した後の徳川家斉の時期。これを頭に入れておくと、さらにおおよその時期の見当がつきます)。