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三ヶ月前──。
路面電車の駅に併設された小さなブースで、カカは証明写真を撮った。
ブースに入ろうとしたとき、中から自分と同じくらいの年格好の女の子が出てきて、すれ違いざまに、「ん?」と声が出てしまうほど、いい匂いがした。
その彼女こそがククで、でも、そのときはまだ名前を知らない。カカはなんとなく彼女に会釈をし、ブースの中に入ると、彼女がのこしていった「いい匂い」に包まれて写真を撮った。
撮り終えて、プリンターから吐き出された写真を手にしたとき、トラッシュボックスの中に丸められた写真が捨てられているのに気づいた。普段、そんなことはしないのに、カカは衝動的にその捨てられた写真を取り出し、無造作に丸められたものを、手の中でそっとひろげた。
写っていたのは若い女性で、髪型やシャツの色からして、いますれ違った彼女に違いない。
つい、見入ってしまった。
写真の中の彼女の瞳がエメラルド色に輝いていたからだ。
「同じ同じ」とカカはつぶやく。
実際に瞳の色がエメラルド色というわけではない。なぜか、フラッシュがまたたくと、その瞬間、瞳がエメラルド色に反射してしまうのだ。
そのときカカが撮った写真がまさにそのとおりで、拾い上げた写真と自分の写真を並べると、四つの瞳が同じようにエメラルド色に輝いて、一瞬、見分けがつかないほど、顔つきまでよく似ていた。
「誰なの?」