クリスティン:奥様が始めたボランティア活動について教えていただけますか? 『フリーダム・フォー・ファイドー(訳注:Fido は忠犬の意味)』には今やあなたも積極的に参加されていますね。

これはリタイアした当初、予想していなかった展開ではないでしょうか? 奥様の活動を支援するうち、ご自分も参加するようになったとうかがっていますが、いずれにしてもすばらしい活動ですね。

フリッツ:妻は25年間、主婦として家庭を守ってきました。結婚したころは働いていましたが、娘ができたあと仕事をやめて子育てに専念したんです。

娘が大学に入って家を出ると、僕らは妻の母と同居を始めました。義母はアルツハイマー病を患っていたので、妻がつきっきりで介護しました。当時は意識していませんでしたが、義母の世話は妻にとってフルタイムの仕事のような位置づけでした。

僕は自分のリタイア準備に忙しく、ちょうど『退職宣言(ザ・リタイアメント・マニフェスト)』ブログを始めたころでもあって、そちらにかかりきりでした。

妻とはしょっちゅうリタイア生活を話題にしていて、それが自分たちの生活や夫婦関係にどんな影響をおよぼすかを話し合っていました。予想外だったのは、義母が亡くなったあと、妻の生活が激変したことです。

僕の退職が2018年の7月で、義母はその2カ月後に亡くなりました。妻にとってそれはいきなり解雇されたような衝撃だったようです。混乱して、まともに考えられない状態でした。母親の死は、彼女に思わぬ喪失感をもたらしたのです。

そんな妻を身近に見ていたおかげで、人生の大きな変化に順応できず苦しむ人の気持ちが少しわかるようになりました。僕のリタイアは入念に準備していたこともあってスムーズに移行できましたが、妻はちがいました。母親の死が人生の転換期となりうることを想定していなかったからです。